中卒先生の神(自分)のお言葉(寝言)










2017年10月


 俺が住む所沢(大所沢連邦共和国)には猫カフェやフクロウカフェではなく、「人カフェ」
がある。声帯を取った人間がキャストとして沢山いるのだ。妙なことを考える知恵を無く
すために猿の脳を移植し(ウチのギターのケムール星人と同等くらいの知能になる)、縮小
機にかけ、縮小した小さな人間。ちょうど手の平に乗るサイズの「手乗りびと」だ。
 この人カフェにいる手乗りびとは、服など着ず全裸で店にいるのだが、このサイズだと
全裸でチンチンをブラブラさせていてもまったく気にならない。ブサイクな男や肥満体な
ど逆にカワイイくらいだ。
 所沢には名前のない人間、番号で呼ばれている人間がいる。逆に所沢の猫や犬には「渋
谷哲平」「堤大二郎」「千堂あきほ」といった感じで、名どころか苗字まである。所沢には
俺を頂点とする「中卒所沢市長・貴・士・農・工・商・犬猫・穢多非人」という身分によ
る階級があり、穢多非人は人間とは認められていず、名前などない。これが番号で呼ばれ
ている者だ。だが、この人カフェにいる手乗りびとにはちゃんと名がある。「知恵蔵」や「で
ん助」、「ブーコビッチ」、「ピッポリット星人」なんていう名の手乗りびともいる。
 人カフェに来店する客は20代から30代の女性が中心だが、4、50代の子連れのお母さ
んもわりといる。お母さんは慣れたもので、他の客と同じように人撫で声を出しながら手
乗りびとを手の平の上に乗せて頭を撫でたり、おやつ(柿ピーやヒマワリの種)をあげたり、
人じゃらしを使って遊んだりしている。こうしているととても癒されるそうだ。
 連れて来てもらった子供は、初めて見る手乗りびとに興奮して大はしゃぎ。まさに“生
きたオモチャ”“生きた人形”という感じで、2匹の手乗りびとをそれぞれ片手でつかみ、
“近未来型人形遊び”を始める。テーブルを崖に見立て「うわぁー!」と大声を出したと
思ったら、「知恵蔵は大ピンチに陥ってしまった。だが、これはほんの序曲に過ぎない。こ
の後、人生の荒波が待ち受けていようとは知恵蔵は知る由もなかった」などと大映ドラマ
風のナレーションまで入れる始末。エンディングでの「泣け、ピッポリット星人。知恵蔵
の胸にすがって泣くがいい。そして明日になったら、あの太陽のような明るい笑顔を見せ
るのだ!」というナレーションもふるっている。
 この人カフェ、当然だが客も全裸で来店する。この店での客と手乗りびとの関係はフィ
フティー・フィフティーなのだ。どちらが上も下もない。両方マヌケというだけだ。
 所沢は島国・日本など比べものにならない先進国だ。日本は所沢より1000年遅れてい
ると言われており、マッカーサーではないが、日本人の精神年齢は“猿の2歳”だと所沢
では言われている。かつて所沢は、人間に代わってロボットが支配した時代があった。ロ
ボット開発に力を入れていた所沢では、人工知能が意思を持ち、「人間はウンコをする。あ
んなウンコなんてくだらねえものをする生き物になぜ従わねばならない?」、と人間を見下
し、やがてロボットが反乱を起こしたのだ。この戦いで人間はロボットに破れ、全ての人
間はロボットの奴隷と化し、不眠不休でベルトコンベアから流れて来るアンパンに胡麻を
乗せる流れ作業をやらされた。元の肩書きは一切関係なく人間なら誰もが平等に、大企業
の社長も総理大臣もアンパンに胡麻を乗せた。ロボットはものを食べないと思われがちだ
が、それは勘違いで、じつはアンパンが大好きなのだ。他にもエクレア、特にモカエクレ
アには目がない。
 ロボットが支配する前に、ほんの一時期だが猿が所沢を支配した時代もあった。進化し
た言葉を話す猿は、人間のことを「毛のない猿」と呼んだ。さすがにアンパンに胡麻を乗
せさせたりはしなかったが、「地球の木を勝手に伐採した罰だ!」と言って、全ての人間は
木のポーズをとらされ延々に立たされた。が、そこはウンコをするブザマな者同士、バカ
はアホを知る。リンゴやバナナを大量に使って手懐け、すぐに形勢は逆転し、再び所沢は
人間の天下となった。猿を殺すにゃ刃物はいらない。バナナやリンゴがあればいい。
 所沢人より先に所沢に棲んでいたという、“真の所沢人”、所沢の先住民「ノンマルト」
なんていうのもいた。ノンマルトは現在、所沢に住んでいる人間より遥か昔から所沢に住
んでいて、現所沢人に住居を奪われ、追いやられて今は海底に住んでいるという。「じつは
現所沢人こそが侵略者だ!」というのが彼らの言い分だ。
 実際に調べてみると、ノンマルトが住む海底都市は所沢湾の海底に存在した。その海底
都市にはノンマルトの住居はもちろん、学校や病院、狂技場や怪物園、発狂ドームや海底
フカイツリーなどがあり、じつによく整備されていた。
 それを知った現所沢人の誰もが大変なショックを受けた。現所沢人はノンマルトの存在
を忌み嫌い、怖れた。ある者は泣き、ある者は気を失うまで前転をくり返し、ある者は脱
糞しながら回転し天高く舞い上がった。現所沢人はわりと器用なのだ。
 大陸間弾道ミサイルの実験を何度も行い、核開発を進めるノンマルト。このまま放って
おくとやがて地上(所沢)はノンマルトに侵略され、今度は現所沢人が海底に住むようにな
るだろう、と考えた当時の所沢のトップ・藤本市長は先制攻撃に出た。かねてから親交が
あったウルトラ警備隊のフルハシ隊員に依頼し、毒まんじゅうを食わせ、ノンマルトの海
底都市をハイドランジャーで徹底的に破壊してもらったのだ。物事を解決するには暴力の
方が早い。勝った者が正義である。ノンマルトは滅んだ。
 血で血を洗う歴史。愚か者が愚か者を倒し、愚か者が愚か者を支配する。アンパンが宙
を舞い、エクレアが飛び交う。所沢を舞台に多くの者が血を流し、青っぱなを垂らし、ロ
ボットはバネが飛び出した。今、俺という神が君臨している所沢は安泰である。人間も猿
もロボットも、生き残りのノンマルトの末裔も皆仲良く共存共栄している。ロボットの医
者やノンマルトの教師、猿の防衛大臣もいる。





中卒